
アスリートが注目する「ビーツのチカラ」
「食べる輸血」とも呼ばれる真っ赤な野菜・ビーツ。近年では欧米だけでなく、日本のトップアスリートの間でもその機能性が注目を集めています。
その鍵となるのが、硝酸塩(しょうさんえん)。体内で血管を拡張させ、血流を促進することで、持久力や回復力の向上に貢献する成分です。この記事では、ビーツのもつ運動機能への影響について、研究に基づいたデータや実例、継続摂取のポイントまでわかりやすく紹介します。
今回は、寺田新先生(東京大学 大学院総合文化研究科 教授)の「スポーツ栄養学第2版」(東京大学出版会)をベースの資料とさせて頂きながら、農水省の硝酸塩の摂取量に関する情報等も利用し説明していきます。
↑私たちにとってスポーツ栄養学のバイブルのような本です。
1. なぜビーツがアスリートに選ばれているのか?
ビーツは天然の「硝酸塩」を豊富に含む野菜です。この硝酸塩は体内で一酸化窒素(NO)へと変換され、血管を拡張し、血流をスムーズにする働きを持ちます。これにより、酸素や栄養が筋肉に届きやすくなり、持久力の向上や疲労回復に効果があることがわかっています。
さらに、筋肉の収縮に必要なエネルギー源ATP(アデノシン三リン酸)のコストも減少(効率向上)。つまり、硝酸塩を摂取していないときに比べて、少ないATPで筋力発揮ができるため、筋肉利用の改善にもつながるということです。
まとめると
・持久力の向上
・疲労の軽減・回復(エネルギー効率アップ)
・筋肉の血流改善
です。
その仕組み、メカニズムは、このようになります。
以上のような効果を得るために、定期的にアスリートがビーツを摂取していることがわかります。
2. いつ摂取するといいの?
そこで気になるのが、運動前に摂取するのがいいのか。それとも継続的な摂取が効果的なのかです。結論からお伝えすると、両方です。運動直前でも持久力の向上に影響があり、さらに継続的に摂取することで、回復力や基礎的体力の向上の期待が高まります。
3. どのくらい、どの頻度で摂取すればいいの?
研究によると、310〜560mgの硝酸塩を、運動の2〜3時間前に摂取すると、一過性のパフォーマンス向上効果がみられますと報告されています。
期間 |
効果 |
摂取の目安 |
3〜7日(短期) |
試合前のパフォーマンス向上 |
ビーツジュース1本 |
15日間(長期) |
回復力や基礎的体力の向上 |
スムージーや料理で日常的に摂取 |
↑国産で生産している私たちのビーツ。中も真っ赤で、甘くて美味しい。
4. パフォーマンスへの影響
硝酸塩を摂取することにより、疲労困憊までの運動持続時間が4-25%延長することがわかっています。また、瞬発力やパワーを必要とする運動に使われる、速筋線維の機能を高めるためです。運動時間が比較的短い、12-40分間の高強度・間欠的運動のパフォーマンスも改善(3-5%)すると言われていますが、12分未満の競技に感しては一致したエビデンスが得られていないのが、現在の研究の最前線です。
パフォーマンスへの影響
・持久力が必要な競技:疲労困憊までの運動持続時間が4-25%延長
・12-40分間の協議 :パフォーマンスの改善(3-5%)
5. 日本のアスリートにも浸透し始めている
日本でも徐々に、スポーツ栄養士やトレーナーの推薦によりビーツの導入が進んでいます。プロサッカー選手、陸上長距離選手、プロバスケット選手、格闘技系アスリートなどが、試合前やリカバリー食としてビーツスムージーなどを日常的に取り入れているという事例が増えています。私たちのビーツもプロサッカーチームや選手への供給、自転車競技での利用も進んでいます。
6. 海外でのビーツ由来製品とその活用
欧米を中心に、アスリート向けのビーツ製品が豊富に流通しています。また、商品ではなく日常的にアスリートが食事にビーツを取り入れることも。どんな商品があるのか、いくつかご紹介します。
■ Beet It Sports(イギリス)
まずは、ビーツ業界のトップランナー。プロのサイクリングチームやトライアスリートが使用しており、アンチドーピング認証のINFORMED CHOICE取得のビーツジュース。400mgの硝酸塩が含まれています。個人的な印象ですが、サラサラというより、まるごとにんじんジュースのようなドロドロ感があり、良薬は口に苦しという印象でしたが、ビーツとレモンしか入っていないのに、いつもより息切れしづらくなった印象(プラセボ試験もしているとのことなので、本当そう)。 https://www.beet-it.com/
■ Juice Performer(アメリカ)
コンパクトな缶タイプ。遠征や試合会場への持ち運びに便利。1本につき、300mgの硝酸塩が含まれており、数種類ありますが、これはパイナップルとブレンドしているそうです。まだ飲んだことはありません。 https://juiceperformer.com/
■ SuperBeets® Sport(アメリカ)
濃縮ビーツパウダー。水に溶かして飲むだけで高濃度の硝酸塩を摂取可能。ビーツの他のココナッツウォーターパウダーが含まれているそうです。こちらもアンチドーピング認証のINFORMED CHOICE取得しています。まだ試したことはないです。https://humann.com/products/superbeets-sport-non-stimulant-pre-workout
7. 上手に摂るコツ:日常への取り入れ方
さて、ビーツに含まれる硝酸塩がパフォーマンス向上に効果的であることは、見えてきましたが、問題はどう食べるかです。ここで私の考えを少し共有すると「硝酸塩」だけにフォーカスするよりも、ビーツに含まれる栄養素や一緒に食べる他の食材の組み合わせやバランスも大切ということです。つまり、どう美味しくバランスよく食べるか。そんな観点も含めて上手に摂るコツを紹介します。
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ビーツを蒸す or 焼く
硝酸塩は水に溶けるため、調理での損失を防ぐには蒸し調理、ホイル焼きがおすすめ。しかも熱を加えると甘みも増すためとても美味しくなります。 -
スムージー・ジュースで
生ビーツをそのまま摂取できるので、効率よく栄養補給できます。 -
加熱済みのビーツを使用
私たち、BETTEのビーツの水煮は、硝酸塩や、熱に弱い栄養素もなるべく取れるよう、低温で真空加熱をしています。甘さ、おいしさ、色、栄養素を含めて、最高の出来になっています。
BETTE ビーツの水煮の詳細: https://bette-kobe.com/products/boiledbeet10
ビーツの水煮を使ったサラダ。サラダに乗せるだけで簡単に使うことができます。 -
ドリンクを摂取
BETTEのSPORTS SMOOTHIEやクラフト甘酒は、野菜・フルーツ・スパイスとブレンドして作っており、「飲みやすさ」と「他の栄養のバランス」も考慮した自然派のエナジードリンクです。
8. 注意点とまだわからないこと
食を通して、健康や体づくりを行うことが大切なのは、当たり前のことです。しかし、過信することや、過剰摂取によってバランスを崩すことは望ましくありません。また日々のトレーニングや練習がおろそかになり、食頼みになるのも本末転倒です。特効薬ではなく、体づくりや、食習慣の一貫として、日々の楽しみとして、美味しくビーツを食べて頂くのが大切なのではないかと考えています。また最後に研究でまだわかっていないことも注意点としてまとめておきます。
研究でまだわからないこと
・最適な摂取量やタイミングには個人差あり
・瞬発系スポーツ(短距離・重量挙げなど)の効果は今後の研究に期待
・過剰摂取や特殊体質による副作用の検討もまだ十分ではありません
いかがでしたでしょうか?
ビーツは、科学的根拠に基づき持久力や回復力をサポートする食材として、世界中のアスリートに選ばれています。摂取タイミングや量を工夫することで、その効果はさらに高まります。日々の食事やトレーニングに取り入れ、パフォーマンスの変化を体感してみてください。もし試してみたら、感想や工夫をぜひシェアしていただけると嬉しいです。何より、美味しく食べることが身体にとっても、継続するという観点でも大切なので、無理せずスタートしてみてください。
私たちは、もっと最新の研究を追いつつ、科学的な知見を蓄積しながら、科学的根拠に基づいた正しい情報をみなさんにわかりやすくお届けできるようにこれからも心がけていきます。
参考文献
東京大学 寺田新「スポーツ栄養学第2版」
近藤衣美「直接的にパフォーマンスを向上させるサプリメントの科学的根拠」
農林水産省「食品中の硝酸塩に関する基礎情報」
農林水産省「食品からの硝酸塩の摂取量」
Bailey SJ et al. (2009), Journal of Applied Physiology, 107(4): 1144–1155